先日、近所のスーパーで目にしたのは、1リットル97円の醤油、目を疑いました。
輸送コストや容器代を考えても、通常の醤油の原料原価より安いのではないかと思うのですが・・・。
どのようにすればこのような低価格な醤油が作れるのか、原材料を見てみました。
主原料は脱脂大豆、その他沢山の添加物とアミノ酸で作られていました。
恐らくは脱脂大豆を科学的に分解し、アミノ酸で味をつけた醤油もどきなのでしょう。(ちなみに脱脂大豆とは大型機械でノルマルヘキサン(ベンジンの主成分)という有機溶媒を使い油分をとりだす抽出法で製油した、大豆油の絞り粕です)
もともとこの「アミノ醤油」は、戦後の物不足の時に開発された、ごく短時間で製造できる代用品ですが、最近はこのような醤油は見かけなくなったので、都内で見たのは驚きでした。
以前住んだことのある長野県のある地方で、このアミノ醤油が大きなボトルで販売されていて、まだ地方では残っているのだなあ、と思っていましたが、東京で売っていると言うことは、またまた復活してきたと言うことでしょうか?
デフレや不況でとにかく低価格なものばかりが望まれています。そのため、昔から伝統的に培われてきた良質な物が失われ、粗悪なもどき品が台頭してきます。
目先の損得のため、少しでも安いもののため、本物の味が失われ、伝統的な技術や製法が失われることは取り返しのつかない損失になるだけでなく、人間の身体にも保障の無い実験を繰り返しているような物です。
安いものを買うことは、社会的に弱い立場の生産者の生活を犠牲にしていると言うことは度々お話させて頂いていますが、子供たちの将来や身体をも犠牲にしているとも言えます。97円の代償はどのくらい高くつくことでしょう。
醤油を例にしてみれば、本来私たちの食卓に上るまで2年はかかるものです。合理性や経済性とは程遠いものですが、この豊かさは何よりも価値の高いものだと思います。
福猫屋でご紹介している井上醤油は、100年以上も前の江戸時代から続く蔵付き酵母が生み出す天然の醤油です。この時間こそが大切なものなのです。それに決して高い醤油ではありません。むしろこの品質では安すぎる位です。
安いものを求めることは大きな損失と代償を伴うということは、今回の原発事故で日本人みなが経験してしまったことです。その教訓は日常のいたるところで生かしていかなくてはならないと思います。
奥出雲 古式醸造醤油
http://www.fukuneko-ya.org/NF/inoueshouyu.html