ストリートチルドレンを考える会
…子どもたちの未来のために……
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ニュースレターVuela
2008年05月15日

2008年5月発行のニュースレターより

グアテマラ 売買される少女たち 

共同代表 工藤律子
 私たちの会が支援しているメキシコのNGO「カサ・ダヤ」に以前、グアテマラ人の少女がいた。彼女は何年間もこの母子支援施設で暮らした後、自立生活に入った。なぜ彼女はメキシコに?それは、グアテマラの首都グアテマラシティに暮らしていた頃、人身売買業者の罠にはまり、祖国と国境を接するメキシコのチアパス州にある買春バーに売られたからだった。そこを脱出し、仲間の少女とふたり、メキシコ各地を放浪。その途中で、ある男性の子どもを妊娠。最後に「カサ・ダヤ」にたどりついた。
 グアテマラには、この少女と同様、知らぬ間に「商品」にされ、性産業に組み込まれてしまった少女が大勢いる。様々な統計データを総合すると、グアテマラ国内のバーやホテル、買春宿などで「性的に搾取されている」未成年者は、少なくとも2万人以上(5万人と言う人もいる)。同様の状況にいる未成年者の人数が約2万人というメキシコよりも、ひどい状況だ。これに、国外に売られたケースを加えれば、数字は更に増える。
「自分の心が痛かった」
 そうつぶやいた少女(16歳)は、愛人と暮らすアルコール依存症の母親の命令で、酒を飲まされ男の相手をさせられていた。そうしなければならないことに深い苦痛を覚えながらも、がまんしようと努力した。たまに嫌がると「バカ娘」とののしられ、更に傷ついた。ふたつ年上の姉も、同じ目にあっていたため、ふたりで家を飛び出し、1か月ほど路上暮らしをした。その後、ようやく政府の施設に保護された。今はそこで読み書きや料理を習いながら、姉や似た境遇の少女たちと共に暮らす。
 性的搾取の犠牲者は、大半が貧困家庭出身の少女だ。良い仕事があるとだまされたり、お金に目がくらんだ親に売られたりして、性産業に入れられる。そうしていったん足を踏み入れると、脅しや借金、薬物などで縛られ、容易に抜け出せない。たとえ抜け出せても、妊娠、性感染症、薬物やセックスへの依存などに悩まされ、「普通の生活」に戻るには、多大な努力と支援が必要になる。
「娘のために変わりたい」
と話す少女(17歳)は、4年前、実父にバーへ売られ、各地の店を転々としながら体を売り続けてきた。その間に、2度出産。今は1歳の長女が養護施設に、出産時に呼吸困難を起こした次女が病院にいる。そんな娘2人と人生をやり直そうと、1か月前からNGO「カサ・アリアンサ・グアテマラ」(私たちの会が支援する「カサ・アリアンサ・メヒコ」の姉妹団体)の施設で暮らす。
「月1900ケッツァル(約22,800円)ほど稼いでは、薬物を買っていたの。依存から抜け出せなくて、施設に入っても、すぐに脱走していた。でも今は違う」
 本人が話すとおり、彼女はこの施設に過去4回入ったことがある。が、毎度薬物欲しさに1〜2週間で脱走していた。それでも今回は自らスタッフに連絡して、働かされていたバーから救出してもらい、施設に定住する努力を続けている。母乳を飲む時期の次女が入院して不在のため、時々お乳がパンパンになって痛くなり、自分でお乳を絞り出す日々が続く。
「辛いけど、ここでがんばらないと。落ち着いたら料理を習いたいわ」
 張りつめた胸をさすりながら、少女はかすかな笑みを浮かべた。
 グアテマラで性産業に従事されられている子どものなかには、経済的により貧しい隣国から来た少女も多い。
 あるニカラグア人の少女(17歳)は、「良い仕事がある」と誘われ、不法入国でグアテマラへ。最初はガソリンスタンドでの仕事を与えられたが、後に買春を斡旋しているカフェテリアで働かされるようになった。3週間程前、警察に救出され、「カサ・アリアンサ・グアテマラ」の施設へ。
 グアテマラ政府やNGOは、こうした少女たちの心身のケアと自立のための教育支援を、根気よく行っている。
 「商業的性的搾取の被害者」である未成年を受け入れる政府の施設は、ひとつだけだが、首都から車で50分ほどの町・アンティグアにある。「ミ・オガール(私の家)」と呼ばれる所だ。そこには、13〜18歳の少女が100人前後暮らしているが、全員が「商業的性的搾取の被害者」ではなく、ストリートチルドレンや貧困家庭出身の障がいを持つ子ども、家庭崩壊のために家にいられない子どもなども、一緒に暮らしている。就学経験がほとんどない少女が大多数を占めるため、施設内で識字教育を行っているほか、読み書きのできる子には普通の学校への通学、自立が近い年齢の子にはパソコン、手芸、調理、美容師技術などの職業訓練を実施している。
 施設所長のエバ・デ・ガルシアさん(52歳)の悩みは、
「異なる境遇、問題を抱える少女たちを、一緒にケアするのは、とても大変です。本当は、もっと専門化した施設がほしい」ということ。特に、性的搾取を受けた少女の場合、施設に定着してもらうには、時間をかけた心のケアが必要なため、様々な子どもたちと同様の生活プログラムの中で対応するのが難しい。所長は言う。
「子どもが、薬物やりたさに出ていってしまったり、いいお金が稼げるからと性産業に戻ってしまったりすると、時々、絶望的な気分になります」
 これに対し、「カサ・アリアンサ・グアテマラ」はより専門的なケアができる環境にあるといえよう。
 まず注目すべきは、このNGOのスタッフが、警察と司法省、移民局が合同で行う「レスキュー・オペレーション」、つまりバーやホテル、買春宿などで働かされている未成年を救出する活動に、正式に参加していることだ。ほぼ毎週1度は行われる活動に、スタッフ1〜2名が同行し、未成年者を見つけたら話をして、施設に来るように促す。
 施設では、救出された少女たちも、このNGOが主な支援対象としている路上からきた「元ストリートチルドレン」の少女たちと同じ部屋を利用するが、心理カウンセリングや医療ケアなど、それぞれのケースに合った支援を受ける。特に医療面では、性感染症やHIV感染のケースが目立つため、特別なケアが必要だ。妊娠中、あるいは子連れの少女たちのためには、母子で暮らせる部屋もある。
 少女が外国人の場合は、移民局と協力して、帰国の手続きを進める。もし祖国の家族が人身売買に直接関わっていることがわかった場合は、その国にあるNGO施設など、ほかの定住先を考える。
「ここ2年間に、200人以上の商業的性的搾取の犠牲者を受け入れてきました。できるだけ彼女たちが学問と職を身につけた末に施設を離れるよう、支援していますが、なかには途中で挫折する子もいます。多くの場合は、家庭が貧しいためにどうしても実りのいい仕事を続けなければならない、施設の規則正しい生活に馴染めない、あるいは薬物依存から抜け出せないことが原因です」
 心理カウンセラーのミルサ・フアレスさん(39歳)がそう説明する。過酷な体験から、自分を含む人間すべてへの確かな愛情と信頼を失っている少女たちに、前向きな人生を歩む道を選んでもらえるように支えるのは、簡単なことではない。が、それでも心とからだの傷・病を癒し、少しでも幸せな人生を築けるよう、支えようと努力を続ける。
 犠牲者に寄り添うだけでなく、政府とNGOはこの問題を根本から解決するための第一歩として、「搾取する者の起訴と処罰」にも取り組んでいる。人身売買業者らを裁き、この「商売・産業」自体を壊滅しようというわけだ。が、しかし、そこに絡む人間の国籍や利害関係が複雑すぎるため、なかなか有罪にできないのが現状。状況を打開するためには、地域や国境を越えた連携プレーによる対策行動が望まれている。
(くどう りつこ・ジャーナリスト)

Posted by at 13:30

2008年04月11日

2008年4月発行のニュースレターより

路上の少女と貧困層の母子を支援するジョリアから その3

小柳出紗季 
 3回にわたって書かせていただいたこのレポートも、いよいよ最後になりました。私がたった3ヶ月で得たものや、この3回のレポートで伝わるものはわずかだったかもしれませんが、みなさんに少しでもジョリアのことや私が感じたものが伝わっていたら、うれしく思います。
 ジョリアにいて、私は何か日本人の私たちにはなかなかない、家族のつながりを感じました。自分の兄弟が他の友だちとけんかをしているとき、自分の兄弟に何か悲しいことがあったとき、ジョリアでは全力で兄弟を守ったり、一緒になって悲しくなって泣いてしまったりするのを、頻繁に見かけます。あまり頻繁に見かけるので、日本の子どもたちは自分の兄弟が誰かと口げんかをしているのを見て、本気で兄弟を守ろうとするだろうか、または自分には関係ないと見て見ぬふりをしないだろうか、と考えてみました。少なくとも今まで私の周りにいた親戚、友だちの兄弟たちは、自分の弟や妹のけんかに加勢して彼らを守ろうとすることは非常にまれだったような気がします。彼らの兄弟愛を見て、8月に参加した「ストリートチルドレンと出会う旅」の時に自分のことを話してくれた子たちが、よく自分の兄弟を心配していたのも思い出しました。
 現地で知り合った友だちのルイスに聞いてみると、もしかしたら、それは家が貧しいために自分が信じられる一番身近な人として、過剰に兄弟を守る傾向があるのではないか、という答えが返ってきました。彼は、今はピザ屋を2つ持つ、メキシコではそれなりに裕福な人ですが、学歴は小卒、母親一人に育てられ、兄弟は10人以上。村で中学校へ通っていた頃に、学校を中退して家族でメキシコシティへ引っ越し、その後しばらくは子どもたちも働きながらダンボールで過ごしていたそうです。実際に彼らと同じような経験をしているルイスの言うことなので、もしかしたら本当なのかもしれません。正しいかどうかはわかりませんが、もし彼が言っていたように、兄弟を守ろうとすることが貧しさゆえであるならば、私はそれがなんだか悲しいことのような、しかし、モノにあふれて家族愛を失いつつある日本人の心の貧しさと比べれば、彼らの心の方が幸せなような、複雑な気持ちになりました。
 しかし、その複雑な気持ちを払拭しようと、私は事あるごとに子どもたち、特に小さな子どもたちにきいていました。
「私と一緒に日本に来る?」
 すると大抵「来る」と答えます。そして私は、
「もうお母さんと会えないけどいい?私がお母さんでもいい?」とききます。するとみんな、「ママと一緒にいたいから、じゃあ嫌」などと答えます。
 私は答えがわかっていながらも、いつもそうきいていました。彼らの家庭での問題を知っているからこそ、それでもお母さん、お父さん、おじさん、おばさんと一緒にいたいという答えに、安心させられるからです。家族と一緒にいたいという気持ちを常に忘れないでいてほしいと思い、質問を繰り返していました。家庭に問題があっても、家族の中に自分を愛してくれる人がいるということが、子どもたちをどれだけ安心させるかということを、子どもたちを通して改めて教えてもらったような気もします。
 話は変わりますが、デイセンターではオルガ、アナイという2人の女性が別のエデュケイターと一緒に働いていました。2人は路上に住んでいた経験があり、ジョリアと関わっていたことがあることから、デイセンターで働いていました。職場でのトラブルから今はジョリアを離れてしまいましたが、私はある時彼女たちと数時間行動を共にしたことで、たくさんのことを学びました。ある日、私は彼女たち2人と一緒に、近々開く2つのパーティの買い出しのため、市場へ行くことになりました。大金を持って電車を乗り継がなければならないお遣いは、彼女たちにとってはちょっとした冒険だったらしく、2人は緊張しながらも舞い上がっていました。市場に着くと、たくさんある店の中から安い店を選んでは、パーティで使うお菓子などを買いこんでいきます。勝手がわかっている2人と一緒で、買い物はどんどん進み、買い物を終えると荷物は3人でも持ちきれないほどいっぱいでした。2つのパーティのうち、1つはオルガの娘たちの誕生パーティだったこともあり、オルガは自分が一番重い荷物を持つのだと言って、率先して重い袋を持って歩いていきました。駅へ着き、荷物を私たちに預けたと思うと、オルガがどこかへ行ってしまい、どうしたのがと思っていると、少しして、3人分のジュースを持って帰ってきました。
「手伝ってくれてありがとうね」
 このオルガの一言と気遣いに、私はとてもあたたかい気持ちになりました。
 地下鉄に乗り、自分がイスに座っていれば、他にお年寄りや妊婦さんがいないか自ら探しては席を譲ってあげる2人。地下鉄の階段でお金を求めているおばあさんを見つけると、自分の重い荷物をおろして財布を出してでも、小銭を恵んであげる2人。小さい子を見つけるとさっき買ったパーティ用のお菓子を開けてプレゼントしてあげる2人。素敵なバッグを持っている人を見つけると、「それかわいいね。どこで買ったの?」と話しかける2人。オルガとアナイと一緒に行動していると、すべてのことに素直に振舞い、同時に人に幸せを振りまく彼女たちをうらやましく思ったり、優しい気持ちになれたり、小さな幸せがあふれているような気がしました。
 私は地下鉄で席が必要な人を自ら探すだろうか、これほど見ず知らずの人に思いやりを持った行動ができるだろうか、と自分の行動を思い返して反省してみたりもしました。
 前に、日本語を勉強しているからと紹介された現地のメキシコ人の友だちと彼女の母親に、「あなたが働くような施設の子たちは、モノを盗んだり、社会のルールを守れない子たちだから、用心しなければダメよ」と言われたことがあります。何を言い返しても、「あなたはまだ彼らをよく知らないからよ」と言われ、まだジョリアでボランティアをさせてもらおうと連絡を取っている最中だったのもあって、実際に彼らをよくは知らなかった私は、多くのことを言い返せないままでいました。しかしオルガとアナイとのお遣いで、自分の人間的な未熟さを反省すると同時に、彼らは人がなかなか持っていない、すばらしくあたたかな心を持っているんだと、胸を張って言えるようになったことにうれしくもなりました。路上に住んでいたからどうこうではなく、裕福な人たちが富や日々の忙しさによって忘れてしまった、人が本来持っている優しさを、少なくともオルガとアナイは忘れていないという点で、私は2人が他の人より優れていると思うのです。
yolia.jpg
オルガとアナイが働いていたジョリアの保育所

 ジョリアに通って、私は自分が今まで持っていなかった多くのことを教えられたような気がします。それぞれ違った、優しくあたたかい心を持った彼らの家庭が少しでも改善に向かうこと、また彼らが今後もずっとそのすばらしい心を失わないでいてくれることを、私は願っています。ジョリアでボランティアを始めるにあたってアドバイスをくださった工藤律子さん、また私を受け入れてくれたジョリアのエデュケイターたちに、心から感謝しています。そして、このレポートを読んでくださったみなさん、上手な文章が書けず申し訳ありませんでしたが、読んでいただいてありがとうございました。
(おやいで さき・大学生)
[注]ここに登場した「オルガ」は、工藤律子著「ストリートチルドレン」(岩波ジュニア新書)に出てくるオルガ自身です。

Posted by at 12:20


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 Photo (C) Yuji Shinoda ☆フェアトレード・オーガニックからストリートチルドレンや児童労働について考えてみませんか☆