ストリートチルドレンを考える会
…子どもたちの未来のために……
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2007年10月

2007年10月12日

2007年10月発行のニュースレターより

メキシコ・ストリートチルドレンと出会う旅・参加者の感想文

小柳出 紗季(大学生)
私が「ストリートチルドレンと出会う旅」に参加したのは、今回が初めてでした。彼らに対する知識も豊富でなく、実際どんな子たちとどんな風に触れ合うのか、どんな風に感じるのかは、なかなか想像できないことでした。
 この旅に参加して最も強く感じたことは、日本の子もメキシコのストリートチルドレンもみんな、同じ子どもであるということです。こういう感想を持ってしまうこと自体、私がある意味偏見を持っていた証拠なのかもしれません。ただ、彼らに実際に会うまでは、彼らの中には周りの大人に疎外されてきたがゆえに、精神的に強くなろうとし、周りに反抗しようとする感情があまりに強くなりすぎてしまっている子が多、と思っていました。もちろん、今回の旅であらゆるタイプの子どもたちに出会えたわけでもなく、ただ彼らの外向けの一面を見ていただけなのかもしれません。しかし、少なくとも私が会った施設の子どもたち、路上で会った子どもたちの中に、本当は自分の人生を変えたい、誰かに手伝ってほしい、誰かに甘えていたい、という思いを感じ取ることが多々ありました。私の抱いていたイメージとは逆に、18歳前後の子たちの中にでさえ、まだ本当に子どもらしい一面をみることもできました。
 また、家族という特別なつながりの強さを考えさせられることもありました。ある施設の女の子は、父親のお酒のせいで家を離れなければならなかったんだと、話してくれました。しかし、今でもお父さんが大好きで、何度か家に帰った時には、たとえお酒を飲んでは暴力を振るう父親であったとしても、少しの間でも一緒にいられてとても幸せだった、と話していました。お金がない、親に暴力を振るわれる、家に居場所がない、それでも少なくとも彼女は自分の家族と同じ場所にいることに幸せを感じていました。仮にそういう考えを持った子が一人だとしても、彼女の話を聞いて、私なりに家族というものに対して、何か特別なつながりを感じることができたように思います。
今回の旅で感じ取ったことはもちろん、この旅で出会ったすべてのことがいろいろなことを考えるきっかけになったことが、最大の実りではないかと思います。今回感じたことがただの感想に終わらないよう、何らかの形で他の人にも伝えていけたらと
思います。
本当にありがとうございました。
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戸塚孝博
(大学生)
 今回の旅で感じたことは、社会のあらゆる問題に対して無関心でいてはいけないということである。ストリートチルドレンの問題もそのひとつだ。社会の隅に追いやられ、苦しんでいる路上暮らしの子どもたち。彼らが苦しみから脱し、社会でやる気を見い出せるように、また自らの力で自分の人生を歩んでいけるように、われわれ一人ひとりができることを考えなければならないと思う。
 私がこの旅に参加したのは、ストリートチルドレンの現状を自分の目で見て深く考えてみたいと思ったからだ。旅の期間中、街のいたるところで多くの子どもたちを目にすることができた。お店で食事中、私に近寄ってきてチョコレートらしきものを売りに来た少年、交差点で停車している車に近寄り、物を売ろうとしていた少年、電車の中で、ガラスの破片を敷いたマットの上を上半身裸で前転した少年、その横でお金を恵んでくれと叫ぶ少女など。みんなストリートチルドレンなのだろうか・・・。普通なら、親からの愛情を一身に受け、学校に行って勉強し、仲間との生活を楽しんでいる年頃のはずだ。なのに、彼らは一体何をしているのだろう。どんなことを考えながら今を生きているのだろうか。子どもたちの健全な成長の機会を奪う貧困は許せない、と強く思った。
 最も貴重な経験になったのは、NGO「プロ・ニーニョス・デ・ラ・カジェ」の方と路上に出て、路上暮らしの子どもを探したことである。
 まず驚いたのは、街の雰囲気の違いだ。宿泊したホテル周辺の比較的治安の良い所がある反面、電車で少し移動すれば、らくがきだらけの薄暗い地域がある。道端に使用済みのコンドームが落ちている光景も見た。上手く文章にできないが、自分に危険が迫ってくるような、そんな緊迫感を感じずにはいられなかった。
 私が行ったのは、トレオという地域だ。ゴミが道路中に散乱し、道行く人も貧しそうな人が多かった。そんな地で出会った2人の男性ストリート生活者。しかし、20歳をこえている彼らに、18歳までの男子を対象にしている「プロ・ニーニョス」では、支援の手を差しのべることができないそうだ。私は、とても複雑な気持ちになった。
 20歳代で人生もまだこれから。彼らも助けることはできないのか。今助けなければ機会を逃すかもしれない。彼らは死ぬまでこのまま路上で生きていかねばならないのか− 何もしてあげられない自分に腹が立った。また、もし私も、メキシコの貧困家庭で生まれ育ったら、彼らのような20代を送っていたのかもしれない・・・と考え、ぞっとした。これがメキシコの現実なのだ。
 しかし、希望の光も見ることができた。トレオを歩いている時に出会った、以前は路上暮らしだったという男性露天商が、こんなことを言っていたのだ。
「サッカー大会とか企画してくれたら、私が路上暮らしの子どもたちを集めてくるよ」
 路上生活から抜け出した人が、その後、ストリートチルドレンとのネットワーク作りに一役買っている。私は、素晴らしいと思った。このネットワークが広がり、路上で暮らす子どもを1人でも多く助けられれば、と願うばかりである。
 NGO施設でも多くの子どもたちと出会った。スポーツをして汗だくになって、一緒に楽しんだ子。折り紙を一生懸命折る子。私にスペイン語を教えてくれた子。一番好きなサッカー選手は?との質問に、「自分」と答えたやんちゃな子。手に本を大事に握っていた子。私のことを好きになってくれた女の子。人権について真面目に話し合っていた子どもたち。路上暮らしの嫌なところはと聞かれ、「命令されること、ゴミを食べること」と正直に答えていた子。みんな苦しくてもがいているはずなのに、笑顔がすてきだった。彼らが笑顔を失うようなことをしてはならない。子どもたちが幸せに暮らせない国なんて未来はないと思う。
 NGO施設の職員の方々の熱い気持ちも伝わってきた。特に、「ロベルト・アロンソ・エスピノーサ財団」運営のコミュニティ開発センターの方が言った「この貧困地域の教育の質を高めたい」という言葉が印象的だった。貧困地域の教育が少しでも充実し、住民の人権意識や考える力が向上すれば、明るい未来の光が見え始めるかもしれない。奇跡が起こせるかもしれない。そんな期待感でいっぱいになった。
 この9日間の旅のあいだじゅう、私はいつも笑っていた。どこの施設に行っても子どもたちの笑顔があったからだ。最初はちゃんと接することができるか不安だったが、そんな悩みは吹き飛んでしまった。いつの間にか、子どもたちと仲良くなって、たくさん遊んでたくさん話がしたい、と思うようになっていた。彼らに幸せになって欲しい、と強く思った。
 日本に帰ってから考えたこと。それは、先進国日本にもあらゆる問題で苦しんでい人がいる。そういう人たちに、自分は無関心でいていいのかということ。自分の幸せだけを考えていれば、それでいいのかということ。身近な所で助けを必要としている人のことを考えられないのに、遠い国で苦しんでいる人のことなど考えられるはずがない。まず、自分が変わらなければいけないと思った。メキシコの子どもたちの笑顔を頭に思い浮かべながら、そんなことを思った。
 今回の旅に参加できて良かった。本を読んでいるだけではわからないことを知ることができた。NGO施設では、次の人生のために新しい一歩を踏み出そうとしている人がいた。彼らの目は、輝いていた。私も負けられない。頑張らなくては!
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岩崎佑香(大学生)
 メキシコ。実は、正直なところ、メキシコなんてよっぽど何か用事でもないと行かないだろう、と思っていた。旅行で行くなんて、考えたことがなかった。しかし、実際に私はメキシコに行って、出会う旅に参加させていただいて、その上すっごくすっ
ごくいい経験をさせていただいた。
 現在、大学3年に在籍する私は、英語を専攻している。スペイン語なんて、「1年の時に選択していました」なんて、告白するのが恥ずかしいくらいなレベルである。まずは、言語を超えた心と心のコミュニケーションだ。そんな風に自分に言い聞かせて(言い訳して)、旅を過ごしたといっても過言ではない。それもあってか、正直、最初は「帰りたくて仕方がなかった」のである。未知の国での、未知なる経験。「本当に来ちゃったよ」、最初はそう思ったのも事実である。
 しかし、「心と心のコミュニケーション」ができることは、すごいことだ。なぜなら、 “Gracias(ありがとう)”と言われて、こんなにも心がホッとなるような、満たされるような、そんな気持ちになれたからだ。言われたいがために、施設を訪れたのではない(むしろ、こちらが「ありがとう」と言いたい)のだが、「ありがとう」を言えることは、人と人との関係を上手に築くのにこんなにも大切なことだったのだ、と再認識させられた。また、それが信頼関係を築いていくために最低限必要なことなのだ、と改めて感じた。
 旅で出会った子どもたちは、みんな人懐っこい。辛く過酷な経験をしてきたにもかかわらず、それを感じさせないほど、元気いっぱいだった。そして、どのNGOでも、子どもたちを一生懸命愛しているのだと感じた。しかし、一度路上で暮らした子どもたちがすんなりと施設での暮らしになじんだり、将来のことを真剣に考えようとしたりするのは、容易なことではない。虐待やドラッグ、性的搾取、ネグレクト、とにかく子どもたちが受けた精神的な傷は、想像できないくらい深いだろう。一度施設に入っても、飛び出してしまう子どももいる。そういった子どもたち一人ひとりを相手に、
一生懸命に愛情を注ぐことも、きっと容易なことではないのではなかろうか。今回NGOを訪問して、子どもたちと子どもたちを世話する人々には想像を超える苦悩や葛藤があるのを感じた。
 だが、どの施設においても「信頼を築く」ことで、互いが居心地よく暮らしていこうとしている。そして、それは今回訪問したどのNGOでも、まず子どもたちと関わっていくにおいて大切なことだと話していた。家族もいて友だちもいる。それが当たり前である私には、「信頼を築く」ことについて「どのように」そして「なぜ」を考える機会は滅多にない。しかし、メキシコでは人と信頼関係を築くことがどういうことなのかを、よく考えさせられた。
 まずは、約束を守ること。そして、「ありがとう」や「ごめんね」が言えること。思いやりをもつこと。なぜ、人と信頼関係を築いていかなければならないのか。人はたった一人で生きていくことはできない。時には誰かに助けを求めたり、助けてあげたりすることもある。互いが共生していくには、信頼関係が不可欠だ。「プロ・ニーニョス」でエデュケイターについて路上に出たときも、エデュケイターは出会った子どもたちとまず信頼関係を築くために、子どもの目線に立って考え、子どもが親しみやすい雰囲気にしていた。定住ホームには、団体で生活していくうえでのルールがあった。どれも、信頼関係を築き、維持していくためのものだとわかった。信頼関係を築くことは、ストリートチルドレンだけに関わることではない。例えば、私たちは友だち関係を続けていくために、どんなことをするだろうか。信頼関係は、人間関係の基盤であることを、改めて思った。また、そういった信頼関係があるからこそ社会がうまく成り立ち、機能していくのだと考える。
 更に、メキシコの深刻な格差社会において、どれだけ人と人との信頼関係が大切か。それを教えてくれる旅でもあった。施設を移動する車中で、こんなにも貧富の差があるのかと驚いた光景があった。スラムを訪問した後、いくらか車を走らせていくと、金持ちを象徴する塀に囲まれた大きな家があった。スラムの掘っ立て小屋のような家と、大きくてデザインも施されている家。その光景は、私をとても複雑な気持ちにさせると同時に、メキシコの格差をありありと見せているように思えた。そして、学校から下校する子どもがいれば、メトロの階段で寝ている子どもがいる。もし、もっと家族や友だち、近隣の人々と信頼関係を築けたら。そうすれば、お金によって見失ってしまうものが、少なくなるのではないだろうか。そして、子どもが住みやすい環境を築いていけるのではないだろうか。子どもたちが置かれている現実を多少なりとも見た私にとって、格差の光景はとても衝撃的であり、そのしわ寄せが子どもに来ていることに憤りを覚えた。
 信頼関係はささいなことから築いていけるものだと痛感した。そして、それは最も大きく心に残っている。私には言葉は分からなかったが、相手がどんなことを思っているのか、表情を通して、つまり心と心のコミュニケーションで理解しようとした。それは、私にとって簡単なことではなかったが、子どもたちから学んだことは大きく、信頼関係があるからこそ心を開けるのだ、と教わった機会だった。そして、子どもたちが人と信頼関係を築き、もっとよりよい社会で生きていけるようにするためには、子どもたちがどんな環境で生きているのかを知り理解することがとても大切なことだと、改めて思った。
 今回の旅で、教えられた点は多々あった。そして、子どもはどの国においても大切な宝物なのだと痛感させられた。この旅で学んだことをこれからも活かしていこうと思う。
 今回の旅でお世話になった、案内人の律子さんと篠田さん、一緒に旅をさせていただいた皆さんや現地のNGO、通訳の方々には感謝の気持ちでいっぱいである。本当にありがとうございました。
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Posted by at 20:02

2007年10月28日

メキシコ・ストリートチルドレンと出会う旅・報告会

 今夏メキシコシティで、路上に暮らす子どもたちや彼らを支援する現地NGOの人々、その支援で新たな人生を歩み始めた少年少女たちに出会ったメンバーが、その体験を語ります。この旅に関心のある方をはじめ、大勢のみなさんの参加をお待ちしています。
 日時   11月24日(土)  午後6時15分〜9時 
 場所   東京・あんさんぶる荻窪 環境学習室
 話し手  今夏の「出会う旅」参加者と旅の案内人・工藤律子(ジャーナリスト)
 参加費  会員200円、非会員350円(高校生以下は250円)
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Posted by at 11:02

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