ストリートチルドレン

ストリートチルドレンを考える会
…子どもたちの未来のために……
Contents..




« 2008年2月発行のニュースレターより |メイン | 路上の子どもたち 悲痛な叫びは社会への警告 »

2008年3月発行のニュースレターより

キューバを旅して・「Dame un peso…(1ペソ恵んで・・)」を耳にしなかった一週間

 日下部 真記
「ラテンアメリカのストリートチルドレン」。これが私の卒業論文のテーマ。昨年の夏、毎年「ストリートチルドレンを考える会」が実施しているメキシコへの旅に参加する予定でいたが、日程が合わず断念。そんな時、工藤さんが独自に企画するキューバツアーのことを知った。逆にストリートチルドレンのいない国の教育システムも見てみるのも良い機会だと思い、即申し込んだ。社会主義国ということに少し不安を抱きながら。
 メキシコからキューバに入った。キューバに着いても、メキシコ人と同じ言語(スペイン語)を話すせいか、メキシコにいるような感じがした。しかし、街並みは同じラテンアメリカでもまったく違った。タイムスリップしたようだった− お店がない、広告がない。スペイン語にもなまりがある。どうしても以前留学していたメキシコと比べてしまう。街中がメキシコカラーに華やかに装飾されていたメキシコから、社会主義国であり、質素な街並みのキューバの首都ハバナに飛んだから、余計にそう感じたのかもしれない。正直な話、キューバに着いた当初は愛着のあるメキシコに戻りたいと思った。しかし、だんだんと居心地が良くなっていく。キューバもラテンの国。陽気で気さくな人たち。「Hola, chinita(こんにちは、東洋の娘さん)!」と何度言われただろうか。
 今回、様々な教育施設を訪ねることができた。保育園、小学校、中学校、芸術教員養成専門学校、自閉症の子どものための学校、視覚障がいを持つ子どものための学校、識字運動博物館。
 いろんな教育施設を訪れて、キューバの子どもたちはしっかりした自分の考えを持っている、と感じた。私たちが質問すると素直な答えが返ってくる。保育園を訪れた時、「絵を描くことは好き?」という私たちの質問に、子どもたちは元気よく「好き〜!」。これで終わると思っていた会話を先生がつなげた。「どうして好きなの?」。子どもたちは「楽しいから〜!」「おもしろいから〜!」。どうして?と理由を聞くことが教育上の指導なのか、おしゃべり好きのラテン人だからの質問なのかはわからないが、このことがどんな時、場合でも意見を言うことができ、何より自分に自信を持つことにつながっていると、私は思う。例えば、カストロ議長(当時)と子どもたちが話す機会があった時には、子どもたちは議長に向かって堂々と意見を言ったらしい。私はそんな子どもたちの勇気に、非常に驚いた。
 訪ねた教育施設の一つ、自閉症の子どものための学校「Dora Alonso(ドラ・アロンソ)」では、子どもたちのために教室に色々工夫が施されていた。自分の教室がどこかわかるように、各教室の入り口にはその教室で勉強する子どもの顔写真が張ってある、時間割表は文字ではなく絵である、などだ。また、親にも家庭での教育を指導するほか、親の集まりには、祖父母や叔父、叔母まで参加し、出席できない場合は近所の人たちが代わって行く。「子どもはすべて私たちの子どもであり、宝だから」と当たり前に言うキューバの人たち。今の日本では考えられない愛情の深さに、本当に驚いた。でもこれは少し前の日本にもあった姿ではないだろうかと思う。
 このように今回、キューバで私は近頃の日本人が忘れかけている相互扶助の精神、思いやりの心を痛感し、家族のつながり、地域の力を改めて見つめることができた。愛情でいっぱいのキューバ。メキシコのように、路上で子どもに、Dame un peso (1ペソ恵んで)、と言われることはなかった。キューバの子どもたちがストリートチルドレンにならない理由が、少し見えた。学校へ通い、教養を身につけ、自信に満ちあふれている子どもたち。これからのキューバ社会を引っ張っていく子どもたち。そんな子どもたちに、期待したい。
 最後に、今回のツアーの企画・案内をしてくださった工藤さん、篠田さんをはじめ、様々なことについて語り、一緒にすてきな思い出を作ったツアーの仲間6名、多くの方に感謝しています。本当にありがとうございました。
cuba1.jpg
芸術教員養成専門学校の教師や生徒たちとツアーの仲間
【補足】
 私が通っている京都外国語大学が昨年、創立60周年記念国際シンポジウムを開催するにあたって、特別講演者としてキューバのカストロ議長(当時)の長男フィデル・カストロ・ディアスバラルト氏(キューバ科学技術評議会補佐官)を招いた。07年夏私がキューバに行ったことを知った教授に、カストロご夫妻と在日キューバ大使ご夫妻のアテンドを依頼された。とても緊張したが、やり遂げることができた。キューバツアーに参加していなければ舞い込んでこなかった話。このツアーに参加したことによって、一生に一度の貴重な体験ができた。
(くさかべ まき・大学生)

検索
Recent Posts
Archives
Categories

※私たちの会は、スタッフそれぞれが自分の仕事を持つ、有給スタッフのいないボランティア団体です。お電話による漠然とした質問や、たくさんの質問すべてにお答えすることは出来ません。その点、ご了解ください。

TOPページへ
 〒112-0001 東京都文京区白山3-4-15内田ハウス1F JULA出版局内
 (C) CHILDREN FUTURE NETWORK All Rights Reserved.
 Photo (C) Yuji Shinoda ☆フェアトレード・オーガニックからストリートチルドレンや児童労働について考えてみませんか☆