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エセナフォーラム2007私は、あきらめない 参加報告

エセナフォーラム2007私は、あきらめない 参加報告
~路上や家庭で虐待と闘う少女たちの現実を考える~

 東京都大田区男女平等推進センター「エセナおおた」にて、6月30日と7月1日の2日間、「エセナフォーラム2007」が開催されました。会は去年に引き続き参加、2日目にあたる7月1日の午後に、第1部、第2部のふたつの内容を実施しました。

第1部  ワークショップ「路上のマリア」

第2部  ドキュメンタリービデオ「私は、あきらめない」上映&トーク

 それぞれの内容と当日の様子について、参加した運営委員と会員がここで報告します。

●第1部 ワークショップ「路上のマリア」

 今回のテーマは日本でも最近深刻化している女の子に対する虐待で、全体のタイトルは「私は、あきらめない~路上や家庭で虐待と闘う少女たちの現実を考える~」。主催者が用意してくださった部屋は、小さな体育館といった感じの木のフローリングと壁の部屋で、プロジェクター用スクリーン、視聴覚室、ステージ等が据え付けてあり、設備はとても充実していました。

 ワークショップの外部参加者は十数人で、年齢・性別は学生から高齢者まで。それに加えて会員が、当日のスタッフを含めて十数名くらい。全体で、だいたい昨年度と同じくらいの人数が集まりました。(なお、エセナフォーラム全体の参加者は、去年に比べて減ったなという印象を受けました。)

 第1部のワークショップは、約1時間でした。前半はまず、参加者が、路上の子どもたちの暮らしぶりや彼らが路上へ来る社会的背景を最低限イメージできるようにするために、メキシコシティの事例を紹介するビデオを10分間観ました。その後、会初めての試みである、演劇スタイルのワークショップを行いました。

 ワークショップのタイトルは、「路上のマリア」。14歳の少女・マリアが、父親からの暴力(ケース1)、または家族からのネグレクト=養育放棄(ケース2)に耐えかね、路上暮らしを始めた、という設定の劇です。参加者には、6人ずつのグループに分かれてもらい、マリアと彼女に関わる家族、友人等の役を割り当て、その役になりきって、今後マリアがどうしたらいいかについて、意見を述べあってもらいます。会のスタッフは、ストリートチルドレンを支援するNGOのスタッフという設定で、皆の話の進行役を担います。私自身は、3つあったうちの1つのグループの進行役補助のような形で参加したのですが、参加者のみなさんはそれぞれにとまどったりしつつも、とても積極的に参加してくださったのが印象的でした。

 このワークショップは、参加者1人ひとりが言葉使いなど、できるだけ「役らしく」やると盛り上がります。期待していた以上に演技してくださる方もいらっしゃり、また私のグループでは男性がお母さん役に、年配の女性が酔っ払いのお父さん役にあたったということもあって、ときには笑いも飛び出し、盛り上がりました。

 終わった後、もう1つ同じケースをやったグループのマリア役の方と私たちのグループのマリア役の方が、それぞれどのような結論を出したかということを発表しあいました。ひとりが「路上生活をやめて、家に帰る」といったのに対し、もうひとりの方は「家にはまだ帰らず、路上暮らしをしばらく続け、NGO施設を見学に行くつもりだ」と言ったことが、興味深かったと思います。

 ワークショップ終了後、総合司会をした会運営委員リーダーの工藤律子さんが、参加者の方数人に感想をききました。そこでは、以下のような意見がありました。

・「内容は深刻なのに、笑ってしまったことを反省した」

 (工藤さんは、内容が自分にとって未体験でかつ深刻なものであるが故に逆に笑わずにはやっていられないという部分もあるのでは?とおっしゃっていました。)

・「家よりも友だちのいる路上の方が安らぐなんて、ストリートチルドレンの子どもたちはかわいそうだと思った。それに対し、日本の子どもたちは幸せだと思う」

 (工藤さんは、路上暮らしの子どもたちは、2度と家に帰りたくないと思っているわけではない、という補足説明をされました。また、メキシコのストリートチルドレンの中には、自分自身が家庭の中で辛い目にあっていることより、愛する親が自分を苦しめる姿や、傍観者になっている家族が自分を助けられずに苦しんでいる様子を見るのが辛くて、家を出てきてしまうということもある、と説明されました。だから、家族を恨んでいるというよりも、いつかそばに帰りたいと考えている子も多い、ということです。一方、日本では、家に居場所がなくなった時にどこにも逃げ場がない、という意味では、メキシコのストリートの子どもたちよりも辛い状況に追いつめられることが多いのではないか?ということも、触れられました。)

・「今までストリートチルドレンとは路上で働く親を手伝っている子どもたちなのかと思っていたが、家庭から逃げた子どもたちだと知って、ショックを受けた。日本でもネットカフェで過ごしている人たちもいることを考えると、ストリートチルドレンと日本の若者たちには共通点もあると思う」

 最後にまとめとして、工藤さんが言いました。

 路上暮らしをしている子どもたちは、「ストリートチルドレン」という言葉でひとくくりにしては語れない、複雑な状況を抱えており、周囲の人たちに関わる問題、社会の問題など、様々な要素に影響されて現在の状況や心境にいる。だから、路上生活を抜け出すための方法も簡単には見つからないし、いい方法を提示しても、路上の子どもが皆、同じ道や解決方法を選択するわけではない。つまり、「ストリートチルドレン」の問題は、多角的な視点から、個人、家庭、地域、路上、社会、世界、様々なレベルでの問題として取り組まなければ、解消されないし、子どもたちが路上へ出なくて済むように、路上から抜け出せるようにするのは難しい。

 そういったことがゲームを通して参加者のみなさんに伝わったらうれしい、という言葉で、前半が締めくくられました。

 「路上のマリア」は今回初めての試みでしたが、今後会のイベントで何度も使っていける、内容のある、かつ楽しいワークショップだと思いました。

(文責・山崎恵理/運営委員)

 

●第2部 ドキュメンタリービデオ「私は、あきらめない」上映&トーク

 第2部ではまず、当会作製のドキュメンタリービデオ「私は、あきらめない-メキシコの幼きシングルマザーとの出会い-」を上映しました。このビデオは、日本人のシングルマザー智恵子さんと、その娘・和子ちゃん(当時小1)がメキシコへ渡り、「カサ・ダヤ」というNGO施設に1週間滞在して、幼いシングルマザーの少女とその子どもたちと交流する姿を追ったものです。当会の会員も含め、約30人が参加、皆真剣にビデオを観ていました。

 ビデオ上映後は、皆で向かい合えるように椅子を輪に並べ、質疑応答をしました。   まず、工藤さんがビデオに出てきた3人の女の子の現在について話されました。ビデオを見ている限りだと、彼女たちは悩みながらもがんばっている様子だったので、きっと自立できただろう…と密かに期待していたのですが、実際には1人が施設を飛び出し、子どもを実家に置き去りにして路上に戻ってしまったと知り、皆が皆そう簡単にはいかないものだなぁと思いました。

 次に、工藤さんの司会で、智恵子さんがメキシコで感じたこと、現在の日本のシングルマザーや子どもたちの現状を話されました。智恵子さんは、日本で虐待を受けた子どもを支援する仕事に関わっているからです。ご自身の経験をふまえ、日本でも家庭内暴力の犠牲となっている少女や女性が多いことも、話されました。

 智恵子さんが、メキシコの子どもと比較しつつ話された、日本の子どもについてのお話の中で最も印象に残った言葉は、「日本の子どもは生命の危険はなくても、心の危険がある」ということです。ストリートに出ることも許されない日本の子どもたち。私の友だちにも悩んでいる人がおり、その数人の顔が頭に浮かんで、悲しい気持ちになりました。「助けて」の一言が言えない子どもが増えているような気がします。 

 また、助けを求める場所を間違えないこと、このことも非常に重要だと感じました。メキシコでも近年は自傷行為(リストカット等)をする子どもが現れ、日本の子どもと似てきている点も多々あるそうです。そのことを含め、実際にメキシコで直接活動している小松仁美さんが、メキシコシティのストリートチルドレン問題及び「カサ・ダヤ」の状況について簡単に報告されました。

 参加された方からは、メキシコでの出産費用や動機について、米国への不法移民問題、人身売買について、質問が出ました。ワークショップ終了後も個人的に質問されている方も数人いらっしゃり、会員と交流している様子が伺えました。

 私としては、久しぶりに会の活動に参加したのですが、いつお会いしてもフレンドリーな、かつアットホームな雰囲気での活動は、「ストリートチルドレンを考える会」の魅力のひとつでもあると思いました。ストリートチルドレンも日本の悩んでいる子どもたちも、誰かとの出会いひとつで、その後の人生は大きく変わります。その誰かとは、メキシコの場合だとストリートエデュケイターかもしれませんし、友だちかもしれません。

 ストリートチルドレン問題は、決して貧困だけからきている問題ではないだけに、非常に複雑です。このイベントへの参加は、日本の今後のことも考えつつ、改めてストリートチルドレン問題を見つめ直すきっかけとなりました。皆様、ありがとうございました。そして、お疲れ様でした。     

(文責・池田弥歌子/会員)

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