セサルさん(NGO「プロ・ニーニョス・デ・ラ・カジェ」デイセンター・スタッフ)
聞き手・皆川晴(会員)
メキシコには、沢山のストリートチルドレンのための施設がありますが、多くの施設では、子どもたちを無理に施設に来させているので、すぐに路上へと戻ってしまうのが現状です。しかし、「プロ・ニーニョス」では、子どもが自分の意思で来ることを大切に考えています。そのため、月に7人~10人の子どもが路上生活をやめる決心をし、他の人生を選んでいます。この人数は、「プロ・ニーニョス」だけが達成できているものです。
Q:路上での仕事は?
毎朝、子どもたちに会うために路上へ行く。そして、トランプをしたり、色々な遊びを教えて一緒に遊んで仲良くなり、まずは友だちになるんだ。その後に、施設に遊びに来ないかどうか、誘ってみる。けれど、ほとんどの子どもが初めは来るのを拒む。何度も子どもを訪ねて行くうちに、来たいという気持ちを見せるようになるんだよ。
Q:デイセンターでの仕事は?
子どもがデイセンターに来たとき、エデュケイターたちは親しみやすい態度、待っていたよ!と言う態度で迎え入れる。そして、洋服を着替えさせ、シャワーを浴び、朝食を皆で一緒に取り、一緒に遊ぶんだ。
同時にこの場所には、子どもたちが将来の事を本気で考え、路上に住む以外の人生を歩むようになるためのプログラムがあるんだ。
まず、お絵かきなどの遊びを通して、子どもとの間に信頼関係を築く。その遊びは、ただ楽しむのではなく、想像力と知性を養うためでもあるんだ。遊びの間、エデュケイターは、彼らが自信を持てるように励ます。「いい絵だね!」とか。そうすると、自信が持てると同時に、自分の中の違う側面を発見できる。
エデュケイターはいつも誠実に、嘘はつかない事が鉄則。しかし、子どもが心を開いてくれるかどうかは、性格にもよる。すぐに友だちになれる子もいれば、時間を要する子もいる。けれど、絶対に友だちになろうとする事と教える事をやめてはいけない。と同時に、健全な共同生活が送れるよう、施設の時間割やルール、エデュケイターを尊重する事を学んでもらわなければならない。それも強制ではなく、友情を通して受け入れられていくようにする。
その次の段階は、彼らの歩んできた道を振り返り、社会の中でどのような状況に自分たちがいるかや将来について熟考する事。そうすることで、将来についての新たな道を発見することができる。その具体的な方法は、例えば家族について話したり、書き出してみること。また、暴力がどうしていけない事か、路上で一体どんなことが起きているのかを考え、話すことも大事。これらの活動は、自分の意思で路上に暮らすことをやめる動機を育てるんだ。誰かに強制された形でやめるのではなく、自分自身の決定でやめる動機だ。
彼らが自分の人生について熟考し、他の人生を選び取ろうとしている時、エデュケイターは、彼らが自信を持てるように励ます。彼らの長所を指摘したり、成功できたことなどを言葉にする。子どもたちは自信を持った時初めて、別の生き方を本当に選べるんだ。
子どもによって、様々な選択肢がある。たとえば、薬物中毒を治療するための施設に入る子どもや、家族の元へ帰る子ども、学校に行く子ども、仕事に就く子ども、養子として他の新しい家庭へと受け入れられていく子どもなど(小さい子の場合)。しかし、大多数の子どもが、路上へ残してきた恋人や、仲間との友情、薬物依存症などの理由で、路上から離れることを拒む。路上には、ちゃんと彼らの社会があるからね。
エデュケイターは、どんな決定でも彼らの決めたことは尊重することが基本だ。しかし彼らが路上暮らしとは別の道を歩む決心をできるよう、手助けすることが大事なんだ。
もし、子どもが家族の元に帰りたいという気持ちを少しでも見せたら、エデュケイターはまず、子ども抜きで家族を訪ねて行き、その家族の生活や経済状況、虐待はないかどうかなどを探る。子どもが家族の元へ戻れる可能性があるかどうかを、慎重に確認するんだ。そして、子どもが生活しても心配がないと確認できたら、受け入れに向けての準備をする。
子どもが家庭に帰った後も、月に2回は必ず訪問し、大丈夫かどうか確認すると同時に、励ます。訪問は、彼らが安定し、感謝の気持ちを表した時に終わる。感謝するということは、幸せになったということの証だから。
Q:デイセンターの(スタッフ=エデュケイター)チームの構成は?
エデュケイターは、様々な学位を持っている者で構成されている。たとえば、社会福祉士、心理学者、教育学者、社会学者。それは、様々な視点から、仕事をするためだ。
Q:エデュケイターの性格
-寛容であること。この要素がないと、フラストレーションがたまってしまう。子どもと関わるときはいつも必要。
-信頼すること。エデュケイターが信頼感を見せると、子どももそれに答えるようになる。
-勤務時間以外の時間帯にも働く意思があること。子どもとの関係には、勤務時間外の仕事もある。本当に子どもを愛している者だけができる仕事だ。
-子どもと関わる仕事をしたいという意思。この仕事は、義務でやることではない。