会が支援しているメキシコシティのNGOその2

 

 

 

★ NGO「オガーレス・プロビデンシア」★

 メキシコシティで「ストリートチルドレン」を支援するNGOとして活動をはじめたのは、この団体が最初だろう。スペインのバルセロナ出身のカトリック神父アレハンドロ・ガルシア・ドゥラン氏(1999年没)が、1979年に設立。これまでに何千人もの「ストリートチルドレン」を路上から救い出してきた。一時は400人近い子どもたちを定住施設に受け入れていたが、神父の死後、資金難に見舞われ、2005年8月現在は、7カ所の施設で計およそ100人の子どもの暮らしを支援している。

●活動内容

(1)定住ホーム hogar grupal

 路上、あるいは政府系施設やほかのNGO施設から来た子どもたちは、父母の代わりとなる「叔父さん」「叔母さん」と呼ばれるスタッフとともに、普通の家庭に近い環境で暮らす。そこには平均15人程度の仲間がおり、ホームでの家族を構成する。学校へ通い、家事を手伝い、家庭・社会生活を身につけていく。その生活を通して、子ども1人ひとりの精神状況、家庭環境、将来への希望などを分析し、心理カウンセリングや職業訓練を受けさせるなど、各自に合った自立までの支援をする。

(2)熟考と娯楽「アレハンドロ・センター」 Centro de Esparcimiento y Reflexi溶

ここでは、定住ホームにいる子どもたちが、ボランティアに学校の宿題などを手助けしてもらったり、パソコン、英語、ダンス、演劇、その他のレッスンを受けられる。また、さまざまな悩み事の相談に乗る心理カウンセラーもいる。 

(3)統合敵健康管理センターとドラッグ依存症の子どものための予防リハビリセンター ★このセンターについては、三井由香さんのレポートに紹介されています。

 

●連絡先

Hogares Providencia I.A.P.

Tel 52-55-5604-3229

Mayorazgo de la Higuera No.8, Col. Xoco C.P. 03330

Mexico D.F. Mexico

* 参考記事「マリオとチンチャチョーマ神父」

   (「ちいさいなかま」2003年1月号より)

 メキシコでストリートチルドレン支援を最も長く続けているNGOに、「オガ−レス・プロビデンシア」がある。カトリック布教のためにスペインから来たアレハンドロ・ガルシア神父=通称チンチャチョーマ(禿頭)神父が、路上暮らしの子どもたちと知り合い、3か月間ともに暮らしたことをきっかけに設立した団体だ。1997年、その事務所を訪れた際、思いがけない人物に再会した。マリオ(当時23歳)だ。

 マリオと私はその2年前、長距離バスターミナルで顔見知りになった。彼はすでにストリートチルドレンとは呼べない年齢だったが、年下のなかまのめんどうを見ながら、廃車の中で寝起きして暮らしていた。

 生後8か月で孤児院に預けられたマリオは、天涯孤独の人生を歩んできた。6歳の時、堅苦しい孤児院を脱走し、路上生活を始めてからは、寂しさを紛らわすためにドラッグをやったこともあった。しかし、その影響で失明したり、おかしくなったりする仲間を見ていて「よくない」と気づき、やめた。そして、生活を変えようとNGO「オガーレス・プロビデンシア」を訪ね、チンチャチョーマ神父と出会った。

「ストリートチルドレンは、大人にひどい接し方をされてきたために、自分をゴミのような存在だと思っている。だが、心から愛しているということを伝えれば、彼らも自分を愛し、他人を愛せるようになる」

 チンチャチョーマ神父はそんな信念に基づき、体当たりで子どもたちに愛を伝えようとしていた。ドラッグをやめようとしない子どもには、ドラッグが脳細胞を焼き殺すことを教え、「おまえがそれをやめないなら、私も吸っている葉巻の火でこうするよ」と言って、自分の腕や足に葉巻を押しつけた。おかげでからだはヤケドの跡だらけだ。が、それを見てドラッグをやめる子も大勢いた。

 神父に励まされ、マリオも路上生活をやめて施設に入った。が、なかまのことが気になり、何度も飛び出した。そのたびに「おまえは素晴らしい人間だ。自分をもっと大切にしろ」という神父のことばを思い出し、22歳でついに路上生活を脱した。

 事務所で再会したとき、マリオは「オガ−レス・プロビデンシア」のスタッフとして働いていた。また週末は、メキシコ連邦区政府に雇われ、路上の子どもたちを訪ねては相談に乗る「ストリートエデュケイター」としても活躍していた。感心する私に、彼はまじめな顔でこう言った。

「少しでも、まだ幼い“なかま”たちの助けになることが、ぼくには大切なんだ。将来は、“チンチャ”のように自分でNGOをつくりたい」

 1999年7月、突然の不幸がマリオを襲った。チンチャチョーマ神父が心臓発作のために、64歳で急死したのだ。葬儀の日、マリオを含む、約3000人の「チンチャの子ども」たちが、彼を天国へと見送った。そして、そのなかの何人かは、今も「父」の意志を縫いで、ストリートチルドレンのために働いている。

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