連載「サポーターフレンド・プログラム」に参加して 
〜それぞれの思い〜

 

 私たちの会が約2年前から実施している「サポーターフレンド・プログラム」の状況を知っていただくために、このプログラムに参加している日本人のみなさんに、リレー形式で感想文を書いていただくことになりました。
 「サポーターフレンド・プログラム」とは、メキシコシティにあるNGO「カサ・ダヤ」に暮らすシングルマザーの少女と日本人の間でメールを使った交流をするプログラムです。現在、それぞれ18人の間で、1〜2ヶ月に1回のペースで、メールのやりとりが行われています。(日本人側からはそれに加えて、各少女が施設を出る時の自立支援金として、年間約100ドルが寄付されています。)
 路上や貧困家庭で性的虐待を受けるなどして望まない出産をした少女たちは、「カサ・ダヤ」で子育てをしながら共同生活をおくるなか、身近な人とは話し辛く、遠い友人とメールで話すほうが気楽なこともあるだろう。海外に友人を持つことで、自分自身に自信を持ち、より広い視野に立って人生を考えることができるかもしれない。日本人も、直接一人の少女と交流することで、「ストリートチルドレン」やその背後にある様々な問題を、より深く見つめることができるのではないか−− そんな思いに基づき始まったこのプログラムに参加しているみなさんは、それぞれどんな思いを抱いて交流を続けているのでしょうか?それぞれの思いをつづっていただきました−−−−
 
[その1 宮野玲華さん] 
  私とストリートチルドレンとの最初の出会いは、高校生の時でした。
米国テキサス州からホームステイ先のホストファミリーと、車でメキシコに渡りました。国境の北と南はたった数メートルの川を隔てているだけなのに、別世界が広がっていました。
車で走っていると、瞬く間に子どもたちが3人ほど集まって来て、車の窓を拭き始めました。初めて目にする出来事だったのでとても驚きましたが、ホストファミリーは慣れた様子で、そのまま車を走らせていました。
 メキシコの街を歩いていくと、路上では車の窓拭きをする子どもたち以外にも、ビラ配りをする子や大道芸をしている子どもたちにも出くわしました。ショックでした。働いている子どもたちは皆、小学生くらい。日本ならあたりまえのように学校に行っています。メキシコの街で見た子どもたちは路上で労働せざるをえないという現実を思い知らされ、胸が痛みました。
 その時は、子どもたちと直接関わることはなかったのですが、彼らの姿は1人ひとり、頭に焼きついて離れることはありませんでした。
 「私は彼らに何ができるだろうか?」
 そんな思いをずっと胸に秘めていたら、帰国後、偶然にも工藤律子さんが書いた本『Vuela!とんでごらん!〜ストリートチルドレンと過ごした夏』(ジュラ出版局)を見つけました。メキシコで出会ったあの子たちと関わりあえるきっかけを見つけることができて、とても運命的なものを感じました。
 支援や手助けをするという立場になると、どうしても相手を「かわいそう」などの目で見てしまうと思うのですが、そうではなく『Vuela!』のサトルとマルセリーノのように友だちとして対等な関係を彼らと築けたら、すばらしいだろうなと思いました。「サポーターフレンド・プログラム」は、私にとってまさにうってつけの企画でした。
 (「カサ・ダヤ」に暮らす少女)アントニアがペンフレンドに決まったとき、そして初めて彼女からメールをもらった時は、とても感激しました。お互いに遠い存在だったのに、このプログラムを通して知り合うことができたなんて、感無量でした。アントニアとは『サポーターフレンド』としてではなく『ベストフレンド』として、何でも語り合えるような仲になりたいと思いました。
 新しいメキシコ人の友だちができ、わくわくした気持ちで彼女にメールを書いていましたが、彼女のメールからは、今までとても酷で辛い境遇におかれていたことがひしひしと伝わってきました。
 最初の頃の彼女のメールは悲しみにあふれていて、読んでいてとても心が痛みました。最愛の子どもを盗まれたとか、母親に拒絶されているといったことを話してくれました。私が今まで経験した辛いことなどあまりにもちっぽけで、メールの中にいくら慰めの言葉を並べても、「アントニアを癒してあげられるのだろうか?彼女の辛さなどわかりっこないのに。今すぐにでもアントニアの元へ飛んでいって強く抱きしめてあげられたらなぁ・・・」と、彼女にメールを書くたびに、いたたまれない気持ちがしました。
 アントニアのメールを読むと悲しい文面もあるのですが、必ず私のことを「いつも思っているよ、好きだよ」と言ってくれるので、海の向こうでどんなに悲しい境遇にありながらも自分のことを思ってくれているのだなと思うと、とても感動させられます。
 一度、私が父親は外国にいて、もう10年以上も会っていないということをメールに書きました。アントニアの返事には「お父さんと一緒じゃないのはとても悲しいね。早くお互い連絡がとれるといいね」という励ましの言葉がありました。アントニアも父親がいないとのことだったので、私の気持ちをわかってくれて、その時のメールはとても印象に残っています。
 私が次のメールで父が私の手紙に返事を書いてくれたといったら、アントニアはとても喜んでくれました。彼女がくれた言葉は本当に忘れられません。
「あなたのお父さんがあなたのことを絶対に忘れないでほしい、またあなたと一緒になれますように、そうしたら二度と離れることがありませんように」
 アントニアの心からの思いが、ひしひしと伝わりました。アントニアのほうが遥かに辛い境遇にいるのに私を慰めてくれるなんて、本当に感謝の気持ちでいっぱいでした。
 アントニアとはこれからもずっと友だちでありたいし、彼女の苦しみを癒してあげられる存在になれたら幸いです。
 喜ばしいことに最近のアントニアのメールは、うれしいニュースが増えています。お菓子作りを習い、その道を究めようと前向きにがんばっています。自信がつき、満足した様子のアントニアを想像すると、私も本当にうれしいです。彼女のがんばりに私も勇気づけられ、私も負けないようにがんばらなきゃという気持ちにさせてくれます。
 今はメールのやりとりがほとんどですが、メールは実際アントニアが直接打っているわけではなく、アントニアいわくメールでは言えないこともたくさんあるそうです。今年はもっと手紙や写真の交換ができたらいいと思います。でも何よりも、アントニアに1日でも早く会える日が来ることを強く願っています。

                                      (みやの れいか・会社員)
   

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