愛・地球博市民プロジェクト、『ストリートチルドレン芸術祭』告知

 (123号に掲載)

                           会員 大橋枝利子

●万博史上初の市民によるプロジェクト

 3月25日から愛知県にて開催される2005国際博覧会(愛称:愛・地球博)では、150年の国際博覧会史上初の市民主体による200余りのプロジェクトが行なわれる予定です。市民の中にはもちろん、様々なNGOが含まれています。

 この国際博覧会の会期は、2005年3月25日〜9月25日の半年間ですが、その間、実に多種多様なプロジェクトが市民の手によって開催されます。そのひとつが、私が関わっているプロジェクト、『ストリートチルドレン芸術祭』です。

● 『ストリートチルドレン芸術祭』

 これは、200以上の市民プロジェクトのうち、オープニングイベントを担う4つの1つです。その4つは、高校生・大学生が中心となって実施されるもので、各プロジェクトは1名ずつ,海外からゲストを招聘し、それぞれのテーマに沿ったイベントを行ないます。テーマは、「ストリートチルドレン」、「アフリカの叡智」、「高校生1万人平和署名」、「地球スカベンジ大計画(スカベンジ=ゴミ拾い)」です。

 『ストリートチルドレン芸術祭』は、「ストリートチルドレン」と呼ばれる子どもたち1人ひとりの可能性や素顔、存在、メッセージを、彼らの作った詩や絵という「アート」を通し、人々に伝えることを目的とし、高校生や大学生、社会人が一丸となって行なうプロジェクトです。私はメンバーの1人なのですが、このプロジェクトに加わろうと考えたのには理由がありました。昨年夏から冬にかけてメキシコのNGO「プロ・ニーニョス」で活動した際、自分が見聞きし、体験し、感じ、また考えたことを、人に伝えたいという思いです。まずは家族や友人に、自分が感じたことなどをありのまま伝え、大学や会のニュースレターでも、機会を与えていただきました。しかし、「ストリートチルドレン」に関心のある人々や「国際協力」、「ボランティア」といったものに興味のある人だけでなく、むしろそうでない人々にこそ、彼らの存在を知る機会を持ってもらいたい、しかしその方法とは‥?と考えあぐねていたところに、このプロジェクトの話が耳に入り、参加することにしました。 

 プロジェクト概要としては、まず<オープニングイベント>があります。2005年3月25日から始まる愛知万博ですが、そのオープニング期間(3月25〜27日)に市民プロジェクトのオープニングイベントを担当するのが、先程挙げた4つのプロジェクトです。『ストリートチルドレン芸術祭』のオープニングイベントでは、@フィリピン人ゲスト講演と日本の若者との対話、A世界の子どもたちによる詩の朗読、B芸術祭作品例&募集要綱の発表、そしてCストリ−トチルドレン体験すごろく、が行なわれます。Cのスリートチルドレン体験すごろくとは、会のすごろくチームが試作品として製作したすごろくです。ただ、そのまま使う訳ではなく、400人収容の劇場舞台に合うよう、拡大すごろくなるものを製作。5名程の代表者に舞台でプレイしてもらい、それをスクリーンに映し出して、他の人にも疑似体験していただくのです。

 また、@のフィリピンから招聘するゲストについて、簡単に紹介しますと、彼、 ジャン・ピエール氏(28)は、フィリピンのネグロス島で、比較的裕福な家庭に生まれましたが、幼い頃父親から虐待を受けたために、15歳の時に家を飛び出しました。洗い場や掃除などのアルバイトをしながら路上で生活をし、その暮らしの中で「もう一度勉強したい」という気持ちを抱いたことから、大学に通うお金を貯める努力をしました。その後、西ビサイヤ州立大学に入学し、学士号を取得。その後デ・ラ・サール大学で博士号を取得し、現在は西ビサイヤ大学の「ジェンダーと開発」事務所で働きながら、ストリートチルドレンのサポートをしています。

 なお、「ストリートチルドレン芸術祭」の会期中の活動は、次の通りです。

* 作品募集;世界中から「ストリートチルドレン」と呼ばれる子どもたちによる絵や詩を募集。熱海市立小嵐中学校の生徒の協力のもとで保管。一部を会場にて展示。

* WEBの作成・更新;全作品をWEB上で公開。

* 作品の常時展示;会場内で作品を展示。1〜2ヶ月ごとに作品入れ替え予定。

* ストリートチルドレン2006年カレンダー製作;一部作品を使ってチャリティーカレンダーを製作。会期中、会場内で発表。収益はNGOテラルネッサンスを通じ、「ストリートチルドレン」の支援のために使っていただく。

● あなたも参加しませんか?

 会場に足を運んでいただき、私たちの活動を見ていただきたいのはもちろんのこと、「われこそは」と思う方の参加もお待ちしています。作品募集に協力する、運営委員会に加わる、会場で作品展示を担当する、などなど、様々な形での参加・協力を募集しています。質問・疑問などあれば、会のメールアドレスへ大橋枝利子宛にご連絡ください!愛知万博市民プロジェクトHP:http://www.expo-people.jp/home.php   

愛・地球博市民プロジェクト、『ストリートチルドレン芸術祭』に参加して(124号に掲載)

● 3日間にわたるオープニングイベント

 前号のニュースレターでも紹介させていただいた『ストリートチルドレン芸術祭』のオープニングイベントが、3/25〜27の3日間にわたり、愛知万博会場内、市民パビリオンにて行われました。

● 25日 ジャン・ピエール氏による講演

 「ストリートチルドレン」としての経験を持ち、現在は大学で働きながら自らが子どもたちの支援活動を行うジャン・ピエール氏ですが、講演では自らの路上での経験や支援活動、そして、フィリピンの路上で暮らす子どもたちの現状について話してくれました。

 「路上では汚染された空気を吸わされます。ストリートチルドレンは暴力やギャング闘争、事故、警察の汚職、性的搾取、薬物取引、そしてその他の多くのことを路上で経験します。これが、ストリートチルドレンの生きる世界なのです」という言葉で、子どもたちにとっていかに路上が劣悪な環境なのかということを訴えました。

 そして、路上に暮らす子どもたちの絵や詩を展示するという、今回の私たちの試みである『芸術祭』を、「芸術は子どもたちにとって、憎悪、痛み、報復、冷淡さ、といったものを克服するための『はけ口』となるのです。芸術は、子どもたちに自分自身の『希望』、そして自分が必要としている『愛』を思い出させるのです」という言葉をもって励ましてくれました。

 講演のほかに、若者との対話や日本の中学生による詩の朗読も行われました。

● 27日 ストリートチルドレン体験すごろく

 27日には、2回にわたって30分のすごろくイベントを行いました。

 このイベントでは、3人のプレイヤー自身がコマとなり、観客の前で特大すごろくをプレイしました。特大すごろくとそのルールは、会のすごろくチームの製作したすごろくを基にして作られています。すごろくにはサイコロがなく、代わりにカードを引き、カードに従ってマスを進めていきます。カードには、路上や施設で「ストリートチルドレン」が経験するようなことが書かれていて、いわば『人生ゲーム』のストリートチルドレン版といったところでしょうか。このイベントに、私は進行役兼解説役として参加しました。

 30分という短い時間でどのようにまとめるかが大きな問題だったのですが、3人のプレイヤーが引くカードをあらかじめ決めておく、つまり、どのような人生をたどるのか決めておくことで、どうにか時間の問題はクリアしました。

 工夫した点は、実際にすごろくをプレイせずに見ているだけの観客を、いかに惹き付けるかということです。3人のプレイヤーには「ストリートチルドレン」になりきってもらい、『ストリートエデュケイター』という用語を解説するためにウクレレを弾きながらストリートエデュケイター役が登場し、家庭に戻ることになった子ども役のプレイヤーを母親役が抱擁する・・と、ちょっとした寸劇のように仕立てました。

 すごろくの前に「ストリートチルドレン」に関する説明を入れ、すごろく終了後は各プレイヤーに感想を言ってもらいました。あるプレイヤーは、「他のプレイヤーが施設に入ったりゴールに近づいたりする中、自分だけいつまでも路上のマスから抜けられずに焦りを感じた。子どもの焦る気持ちを実感した」と言ったのですが、それを聞き、実際に子どもの立場になって感じたり考えたりすることによって学ぶことは多くあり、その点でも楽しく学べるすごろくというアイデアのすばらしさを感じました。

● オープニングイベントを終えて

 メキシコのNGO「プロ・ニーニョス・デ・ラ・カジェ」や会での活動を通し、多くの学びや出会いを今までも与えられてきました。しかし今回のイベントで、更に多くの、同じような目的意識を持った人たちと出会い、そしてメキシコ以外の国の路上に暮らしている子どもたちについて知る機会を持つことができました。『芸術祭』に展示する子どもたちの作品は今、そして今後も、世界中から集まって来ます。皆さんもぜひ、彼らの作品を通して、彼らの心の内に触れてみてください。                    

(おおはし えりこ・学生)

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