「ストリートチルドレンについて話せるようになろう」
セミナーまとめ その1
増山三七子
<はじめに>
私達はこれまで大小さまざまな催しを通して、一般の人々にストリートチルドレンについて知って頂こうと触れ合いを実践してきました。そういった地道な活動の積み重ねの成果によって、ようやくストリートチルドレンという言葉が多くの人々に認識されるようになってきているように思います。そこで、今年は、私達会員自身がさらに深いストリートチルドレンに関する知識の共有を目指していくことが必要であると考え、3月の運営委員会で話し合いが行われ、スタッフ育成セミナーを開催することとなりました。
講師は工藤律子さん。みなさんもご存知のように、工藤さんのフィールドワークのエリアは広く、メキシコ、ペルー、キューバなどの中南米諸国からフィリピン、ベトナムなど東南アジア、その他各国に渡っています。工藤さんは高校生の頃からラテンアメリカ諸国に関心を持ち、ジャーナリストとして歩んでこられました。このセミナーでは、長年積み重ねられてこられた豊富な経験を、具体的にわかりやすくまとめていただきました。
ストリートチルドレンの現実と、その社会的背景に関する手引きとして、このまとめを共有し、活用していただきたいと思います。
<その現実>
*ストリートチルドレンとはどんな子達なのか?
- 年齢は5〜6歳〜17〜18歳前後。中でも十代の子供たちが多い。
- 性別では男子7割、女子3割くらい。
- 最近メキシコシティでは女子の増加も見られる。
*何故ストリートに来たのか?
- 家庭内暴力や、虐待、育児放棄、ネグレクトなどが原因。
- 家庭内ストリートチルドレンも増加している。
*何故家庭でそのようなことが起こるのか?
- 生活が貧困であるため。メキシコの場合、一部の富裕な階層と大部分の貧しい人々とに分かれている。貧困層の生活は、多くのアルコール依存症、不満の鬱積による暴力を生み出してしまう。
- メキシコの男女の在り方が男性優位主義(マチスモ)で、女性蔑視の伝統があり、女性は従属的、隷属的生活を強いられている。結婚後、子供が生まれても、80%の家庭で父親が家族を捨ててしまい、シングルマザーの家庭となっていく。
- 母親の離婚、再婚で義理の男親が2人目、3人目となっていくなかで、虐待され暴力を振るわれて家に居場所が無くなり、ストリートで暮らすようになる。
- 女の子の場合、性的虐待を受けることもある。兄弟からの場合もある。
- もともと路上で働く(children on the street )の子供が多数いるのを見ているので、家と外とに大きな差がない。
- 家庭が貧しい上に、虐待をされ、搾取されるより一人で生きていくほうが良い。
- ストリートで仲間と生活する方が自由で楽しい。
*親は捜さないのか?
出身家庭の問題解決能力の欠如ということが、次のような現実となって現れている。
- シングルマザーで、働いて家庭を維持することで精一杯で、子供がストリートに出たまま帰ってこなくても、たとえ探しにいきたくともそれが出来ない。
- 探しに行ってもその後の生活改善はどうにもならいので連れ戻すことが出来ない。または、探さない。
* ストリート暮らしの結末は?
- ドラッグ中毒で体を壊したり、病気や事故で死んでしまったりする。
- 犯罪をして捕まる。
- ストリートエデユケーターの説得により、施設に入って頑張る子供たちもいる。しかし18歳以上になると施設にいることが出来なくなり、再び路上に戻りホームレスとなる例も少なくない。
*どのくらいの期間路上暮らしをしているのか?
- 一日だけ家を出る子もあり、数ヶ月ぐらいであれば、家に帰ることもできる。しかし、一年以上になると、路上暮らしから離れられなくなる。長くなると数年、そのまま大人になることもある。
*どんな問題が起きているのか?
- ストリートチルドレンの第2世代、第3世代が出現してきていること。(友達間でのセックスや、周りの大人からレイプされ妊娠することもある。)
- 寂しさや、不安を紛らわすために、ドラッグ(今はコカインもどきも流行っている)、シンナー(接着剤等)に依存する。少しのつもりが、次第にやめられなくなる。フィリピンにもいるが少ない。ベトナムのホーチミン市では麻薬の売人などをさせられるケースもある。メキシコでは100%近い子供たちがやっている。
- 売春、HIV,は深刻な問題である。
- 生活上の危険として、グループで襲ってくる少年たちや、ドラッグを買わされたり、性産業に付かされおとなから搾取されることがある。危険を避けるため、女の子は昼寝て夜おきていることが多い。
- 早期セックス、50%の子供たちが12歳前後でセックスを経験している。
- 病気になったとき、行くべきところを知っていれば行くが、知らなければそのまま。
*勉強はどうしているのか?
- 中学までは義務教育なので、施設に入れば学校にいくことは出来る。
*将来に対して何か考えているのか?
- しばらく路上にいて、家に帰る場合もある。
- 施設に入って、生活の仕方を身につけ、勉強をして頑張る子もいる。
*ストリートでは、どんなところで暮らしているのか?
- 駅、公園、バスターミナル、市場、ひろば、車の中、マンホール、廃屋などで、人の通行があって雨、風がしのげる安心できる場所。
*どうやって食べていくのか?
- 自分で稼ぐ。広場や、乗り物でストリートパフォーマンスをしたり、市場の手伝い、荷物運び、車の誘導、洗車、ガラス磨きなどでお金を稼ぐ。
- 家から持ってきたものを売る。
- 売春、物乞い、残り物を拾う。
- 教会、その他の団体の食事サービスを受ける。
*周囲の人たちはどうおもっているのか?
- 迷惑と思っている人もいるが、激しい偏見は持っていない。貧困であることに理解と共感はあるので、お金や、食事、着る物などを提供してくれる。
- 自分たちにも余裕がないので、気にはしているがしょうがない。
- 泊めてくれるホテルもある。
*洗濯、風呂はどうしているのか?
- 公園や広場の水道や噴水で、体を洗う。たまに、NGOの施設を利用する。教で頼む。
*楽しみはあるのか?
- 自由がある。犬を可愛がる。友達といられる。周りの人が気にかけてくれることなど。
*いわゆる不良のような形ではないのか?
- 不良、ギャングはストリートチルドレンではなく、貧困層の家庭の子供たち。
- メキシコではなく、ペルーのリマ市などではかっぱらいをするストリートチルドレンがいる。
*誰と一緒にいるのか?
- 友達、兄弟姉妹、カップル、犬などと暮らしている。
ここまでは、ストリートで暮らしている日常の生活に蜜着した事柄を、ご報告しました。次回は、ストリートチルドレンが生まれてくる社会的背景について、述べさせていただく予定にしております。
<備考:このセミナーは4月と5月に一回ずつ開かれました。今後も、継続して勉強していきたいと考えています。>