著者/ノルマ・エレーナ・ネグレーテ
これは昨年12月に横浜で開催された第二回「子どもの商業的性的 虐待搾取に反対する世界会議」のために、NGO「カサ・アリアンサ」と「オードリー・ヘッペバーン子ども基金」および「ECPAT」が共同作成した報告書『中米とメキシコにおける子どもの売買、セックス観光、ポルノ、買春に関する調査』の一部です。
その1 メキシコの社会・人口的な側面について
メキシコは、19億6438万2713平方キロメートル(日本の約5倍)の国土が、 32の州に分かれた合州国だ。
「第12回全国人口・住宅統計調査(2000年)」の予備集計によると、その総人口 は、9736万1711人で、そのうち4735万が男性、5000万が女性となってい
る。つまり、メキシコは世界で11番目に人口の多い国ということだ。その労働人口のうち、22%は、12歳から14歳までの未成年が占めている。
ユニセフが公表したデータによると、メキシコの子どもたちのうち、100万人は自分 とその家族を支えるために、毎日「日雇い仕事」をして働かなければならない。そのほかにも、15万人の子どもが、全国の路上で(物売り、芸などをして)働いている。
メキシコの5歳以下の子どもたちのうち、43%は栄養不良だという事実も明らかになっている。子どもの5人に1人は、その栄養不良のために、平均よりも背が低い。また、6人に1人は、ひどい栄養失調の症状をもつ。
1990年の全国人口・住宅統計調査によれば、メキシコの15歳以下の人口のうち、9.7%は読み書きができない非識字者で、また23%は小学校を卒業していない、もしくは通ったことすらない。また27%は、中学に行っていない。つまり、総人口の半数以上が、初等教育を終了していないということだ。言いかえれば、3500万人近い大人たちが、初等教育を受けたことがない、もしくは終了できなかったということになる。
とはいえ、私たちはもう一つ、「各州によって、その状況には大きな差がある」ということを、頭においておかなければならない。非識字率が高い州は・・・(南東部の)チアパス州/25.4%、(南西部太平洋岸の)オアハカ州/19.9%、(中央西部太平洋岸の)ゲレーロ州/19.7%、(中央高地の)イダルゴ州/15.6%、プエブラ州/13.5%、(メキシコ湾岸の)ベラクルス州/13.2%、ユカタン州/12.9%、(中央高地の)ミチョアカン州/12.8%、グアナファト州/11.9%、サン・ルイス・ポトシ州/10.5% となっている。
1990年の統計によれば、男性の非識字率が9.63%なのに対して、女性の非識字率は15.1%だということがわかる。5%を越えるこの男女差は、教育の場から女性が排除されている現実を示している。
・チアパス州(最も非識字率が高い州)の人口の特色
チアパス州は、広さ75634.4平方キロメートルで、行政単位としては112の地方自治体(市町など)に分かれている。更にそれらは、9つの経済区域に分かれる。
「第12回全国人口・住宅統計調査」の予備データによると、そこには392万515人が暮らしており、これはメキシコ総人口の4%にあたる。
・この調査が行われた地方自治体(チアパス州内)に関する一般的なデータ
トゥクストラ・グティエレス:
この町は1934年以来、チアパス州の州都で、現在の人口は、43万3544人だ。
サン・クリストバル・デ・ラス・カサス:
この町は、チアパス州の中央、「ロス・アルトス」と呼ばれる地域にあり、地方自治体の中心である。町がつくられてらかずっと、ここは政治、社会,宗教、経済の中心として、また移民が集まる町として知られてきた。サン・クリストバルは484.4平方キロメートルの面積をもち、州面積の0.64%、国土の0.24%を占めている。町の人口は、13万2317人で、47.8%(63310人)が男性、52.2%(6万900人)が女性だ。つまり、人口では州第4位にあたる。
タパチューラ:
この町はチアパス州の南東部に位置し、87万7141人の人口をもつ。トゥクストラに次ぎ、州第2番目に人口の多い都市だ。
その2 子どもの商業的性的虐待搾取に関するチアパス州の状況
メディアにおけるニュースやリポートは、私たちに、チアパス州で先住民共同体が経験してきた社会的差別や意図的に仕組まれた「遅れ」の現実を伝えている。例えば国営テレビニュースは、驚きのリポートとして、「チアパス州の(先住民共同体)チャムーラ村での女性の売買」というニュースを伝えた。
その事実そのものは驚きだが、その「儀式」が行われた背景を考えれば、それはエスニックグループがアイデンティティを維持するために必要な、独自の習慣・儀礼に基づくものであることは、明らかだ。そうすると、その「売買」の儀式、あるいは「結婚」は、チャムーラ村のメンバーのあいだでのみ行われることだと断言できる。
もちろん、だからといって、その状況が、村の女性の権利を少しも奪っていないというわけではない。女性は文字通り、「婚姻持参金」や「物々交換」によって、モノかお金と引きかえに、家族(主に父親や兄)の期待に答えなければならない男のもとへと、送られる。が、しかし、この事実が意味することをより的確に理解するためには、まずこの州におけるエスニックグループがおかれた状況を十分に読み取る必要がある。それは、このリポートの目的やカバー範囲を越えているので、ここではこの「売買」を、商業的搾取目的での行為とはとらえないことにする。
ところで、この州では、商業的売春・買春が行われている度合いがとても高く、広範囲に渡っている、ということがわかっている。私たちはその現実に迫っていきたい。
チアパス州における性産業活動は、個人と権力の間にはびこる腐敗と共謀関係、社会的・経済的現実が絡んで、生まれている。その状況は、チアパス州が(グアテマラとの)国境にあるために、よりひどいものになっている。中米の国々で起きている複雑な社会的遅れと貧困状況が、そこに影響しているからだ。結果、多くの、しかも大半が不法入国者として(チアパス州を)訪れる移民を、巻き込んでいる。特に女性や少女にとって、この事実は、単なる身の危険に加え、搾取の構造までもが、その身に振りかかってくることを意味する。
★次号につづく★
(訳・工藤)