メキシコの新聞記事から

      「子どもの日」に働く子どもたち  

 

 4月30日、メキシコでは「子どもの日」が祝われるが、現在メキシコには、この日、おもちゃをもらったり、学校に行ったり、本を読んだりするかわりに、重労働や大した報酬の見込めない仕事に従事している未成年が大勢いる。

国連児童基金(ユニセフ)及び国際労働機構(ILO)の報告によると、メキシコには、重労働に従事している未成年が、350万人以上いるという。「労働者のためのラテンアメリカセンター」の調べでは、その数は1千万人に達し、大部分は安全性や健康面での保証が何もないまま働いている。5歳から17歳の子どもの多くが、他の選択肢もないまま、幼年期と引きかえに、家計を助けるための重労働に携わることを強いられているのだ。

このような状況におかれているメキシコの子どもたちは、多くの場合、「子どもの日」の本当の意味を知らない。また、ほかの子どもたちが楽しむような遊びやおもちゃとも、無縁だ。

クルス・ラミレスくん(7歳)は、本来なら小学校に入学している年齢だが、彼にとっての学校は「ストリート」だった。物心ついたときから、両親と共に道行く人にお金を乞うたり、通りかかる車に花を売ったりして暮らしてきたからだ。彼は、「子どもの日」を祝ったことがない。

「何をする日なのかも知らないよ。いろいろなことを知りたいから学校にも行ってみたいんだけど、お父さんが必要ないって言うんだ。学校に行くぐらいなら、花を売ってろって」

彼は短時間だが、たまに近所に住む子どもたちと遊ぶこともある。その友だちの何人かは、学校にも通っていて、「子どもの日には学校でパーティーをして、お菓子やおもちゃが入った小袋をもらえる」と教えてくれた。

フアン・カルロス・アロヨくん(11歳)は、もう少しマシな状況にある。小学校に通い、4年生に進級できた。しかし、学校に通うために、毎日午後はスーパーのレジで、お客の買った物を袋に詰める仕事をしている。

「午前中は学校に行っているんだ。前はお母さんの手伝いをして、一日中街角で売り子をしていたから、学校に通えなかった。11歳でやっと4年生に進級できた。でも、今でも学用品や制服を買うお金を稼ぐために、午後はスーパーで働いているよ。家にもお金を入れないといけないし。お金が足りないときは、しばらく学校を休むこともあるけどね」 

普通の子どものように、友だちと集まって勉強したり、遊んだりすることは、フアン・カルロスくんにとっては「贅沢」だ。母親と3人の弟を助けるために、小さい時から働いている。

「お父さんは、ボクが5歳の時に家を出て行ってしまったんだ。その時から、街角でガムを売ったり、お金を乞うたりして暮らしてきた。でも、ずっと学校には行きたかったから、お母さんに何度も何度も頼んで、働き続けることを条件に、やっと行かせてもらえるようになったんだ。一日中忙しいし、週末にはスーパーのほかに、路上駐車する車の整理の仕事もしてるから、遊ぶ時間なんてないよ」

メキシコでは、1924年、アルバロ・オブレゴン大統領政権下で、4月30日を「子どもの日」と定めた。これは、1923年にスイスのジュネーブで出された「児童保護宣言」に基づいたもので、国連による推奨(1954年)よりも、30年早かった。だが、そのように子どもの幸福を願い、いち早く「子どもの日」がつくられたにもかかわらず、子どもたちの権利はまだまだ守られていない。

ある報告によると、世界では、子どもの6人に1人が何らかの仕事に従事しており、その数は2億4600万人に上る。そのうち7300万人が10歳以下で、1億8千万人が悪条件の仕事や、鉱山や工場などで人体に害を及ぼす可能性のある材料や農薬等を使う仕事に就いている。 ILOは、約570万人の子どもたちが最悪の状況、つまり自分と家族が生きていくために、奴隷同然の状態を強いられていると見ている。

ILOはまた、約120万人の子どもたちが人身売買の犠牲になっていると考えている。 ユニセフの調べでは、人身売買は、武器や麻薬の不法密売と同数、行われているという。この種の犯罪活動は、それを生業にしている人々に年間120億ドルもの利益をもたらしており、一年間で100万人の子どもたち(大半は少女)を、性産業の犠牲者にしている。

メキシコシティでも、路上で生活する子どもたちの90%が、性的虐待を受けた経験を持つと、ユニセフはいう。

世界中で「子どもの日」が祝われている今、私たちは、多くの子どもたちが働かされ、虐待を受け、健康を害する状況に置かれているという現実を、見直さなければならない。

 

(要約・工藤)

 

 

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